中国 航空券に関わる仕事
森退陣が確定的となる中で、政府与党は緊急経済対策の立案に向けて動いていた。
焦点は株価対策に定められ、与党主導で銀行保有株式買い上げ機構の創設、自社株保有の金庫株解禁、証券税制見直しなどが浮上していた。
特に株式買い上げ機構案はN銀にも、新たな課題を突き付けていた。
与党内では買い上げ機構案に対してN銀が無担保で融資する「N銀特融」の組み合わせ案も出ていたためだ。
これも「通常は行われない政策手段(非伝統的政策手段との一つには違いなかった。
しかし、N銀が丸飲みすると損失のっけ回しだけを受けかねない。
政治が後押しする買い上げ機構案をはねつけるためにも、もはや金融政策面での「非伝統的政策手段」に踏み出す以外にないと、N銀執行部も腹を括る。
買い上げ機構案は翌二○○二年二月に「銀行等保有株式取得機構」として実現する。
結果的にN銀は機構に組み込まれなかったが、それだけで終わらなかった。
第八章でみるように、同年九月にN銀は独自に銀行株買い入れ制度を発足させる展開となる。
戻って、二○○一年三月十九日にはワシントンで再び日米首脳会談が予定されていた。
世界同時株安・市場にも国民にもわかりやすい。
金利ゼロだから金融政策の出尽くし感が明らかになる(金融政策への過剰期待を打ち止めにしたい)への転換。
・解除責任論が浮上する。
すでに無担保コールレートは0.15%に下がっており、追加緩和効果は0.15%しかない・ゼロ金利に戻るわけではないの。
で、前年8月のN銀の解除責任論をかわせる。金利ゼロでも資金を出し続けることで、追加緩和効果が期待できる(政策の出尽くし感を防止できる)・実証的な効果がよくわからない。
市場にはともかく、メリットに対して、日米の政策協調をどうとっていくか。
退陣が決定的な森と、新任の大統領ブッシュの初顔合わせだが、形式的なエールの交換ではなく、経済危機回避のための思い切った抜本策の提示を森は求められていた。
同時にN銀にとっても、同じ十九日に開く政策委会合では市場の納得を得られる思い切った答えを求められていた。
日本列島は数日来、穏やかな天気が続いていた。
十九日も、東京では平年を五度も上回る一八・三度となったほか、一○度を超す地方もあり、汗ばむ陽気だった。
だが、午前九時一分に始まった政策委会合は、外気の穏やかさとは対照的な緊張感に包まれていた。
議論はゼロ金利に戻すか、量的緩和策に踏み出すかに絞られていた。
同日の議事要旨に盛られた各委員の見解から両政策の主なポイントをまとめると表2のようになる。
理論的には、量的緩和策には@金利の低下効果Aポートフオリオ・リバランス効果B期待効果の一つがある。
@は、潤沢な流動性供給による短期金利の一段の低下効果に加えて、Aは当座預金残高に無利子の資金が積み上がることから、金融機関が収益最大化を目指して、その資金の一部を他の資産(社債、株式、貸出など)に振り向ける期待だ。
BはN銀がそこまで資金供給に徹することで、人々の間に、いずれ物価上昇や景気回復に向かうだろうとの予想が生じ、人々のデフレ心理が反転する効果だ。
こうした効果が得られたかどうかは、次章で検証する。
ここでは、この日の攻防すことを指す。
N銀が国債買い切りオペ増額に踏み出すことで国債の安定需要者として長期金利低下の下支え役を果たに的を絞る。
議事要旨と関係者の話から推測できる会合の途中段階での票読みでは、ゼロ金利回帰の立場をとったのがT、Sの一人。
量的緩和策移行はN、U、一木、Tの四人。
つまり、執行部の三人がカギを握る形となった。
関係者の証言では、このうちYは、会議の途中段階まで、量的緩和策への転換に反対、「この際、ゼロ金利復帰やむなし」の立場だったという。
元々、正統派Cマンを任じるYはH以上に、非伝統的政策である量的緩和策を公式、非公式にも嫌っていた。
Yはこれまで執行部案の実質的立案者だった。
しかし、今回はその役を増測に委ねていたこともあり、九人の政策委員の一人としての判断を貫こうと考えていたフシがある。
ゼロ金利解除の責任論は速水だけでなく、Yにも突き付けられていたわけで、Yは一委員として量的緩和策に反対を貫くことで、辞任も覚悟した可能性がある。
Hも本来は否定的だったが、この時の会議では微妙にYと姿勢を違えていたとの観察もある。
総裁であるHは、Yのように九人の一人になりきるわけにはいかなかった。
総裁としての立場上、政ここで増洲チームの柔軟な案作りが生きてくる。
量的緩和策については、これまでNが提唱してきたようにマネタリーベース(市中流通現金「N銀発行高プラス貨幣流通高」とN銀当座預金の合計額)を目標とする方式が当然視されてきた。
増洲らは、量的緩和策を選択しながらも、政策指標にはN銀が資金供給しやすいよう、金融機関がN銀に保有する当座預金残高とする実務的工夫を加えた。
同時に、新政策を継続するコミットメントを示す時間軸効果については、ゼロ金利時の「デフレ懸念の払拭が展望できるまで」という表現があいまいだったとの反省から、Sが前回の会合で提示した「消費者物価指数の前年比伸び率が安定的にゼロ%以上になるまで」とする案を取り入れた。
時間軸政策はインフレ目標そのものではない。
しかし、インフレ率をゼロ%以上になるまでとの目標を据えることで、インフレ目標論者の主張も「半分くらい」認めた格好にした。
さらに、資金量を供給する政策手段として、財務省との間で常に焦点となる長期国債買い切りオペ増額にも修正を加えた。
デフレ深化で買い切りオペ増額圧力が高まることに配慮する意味で、買い入れ額治と市場への配慮を意識せざるを得なかった。
Hは解除責任論に対しては後でみるように、自ら辞任申し出に動くが、それもN銀という組織維持の視点からだったと思われる。
この時、政治の一部が求めていた責任論は、単に「総裁の首」を取るだけではなく、N銀法再改正への手掛かりをつかもうという動きが絡んでいた。
こうした政治の動きに溺め捕られないためには、何とか市場と政治の納得を導き出し、N銀、政策委としても面目を保つ着地を描く必要があった。
の歯止めを、従来からの成長通貨を供給する範囲という基本路線を維持しつつ、これまでのような毎年の銀行券のフロー額ではなく、発行残高を上限とすることとした。
そのほか、発表文の中に、政府・国民に対する注文も付記した。
金融政策の効果を減じさせている疑いの強い金融機関の不良債権問題の解決をはじめとして、経済・産業面での構造改革の進展を敢えて求める表現を加えた。
これは単なる要望にとどまるものではなかった。
その後、N銀が不良債権処理のための追加的公的資本注入論を主導したり、銀行保有株の買い取りに動く際の起点となっていく。
政策委内のタカ派にもハト派にも、政治と市場にも、金融界と国民にも、財務省にも、N銀の実務運営にも、それぞれに巧みな目配せをして議長案の修正が重ねられていった。
その中で、政策委の中で量的緩和否定の旗を鮮明にしてきた一人であるTも、「金利が確実にゼロになるような量を出すのだから、ゼロ金利と同じだということを違うサイドからやるだけ」との割り切りをして、持論を修正した。
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